江戸時代に書かれた貝原益軒の『養生訓』を読んで、日頃の養生に活かすシリーズ。
今回は、巻第一総論上、九。
養生の術は先ず心気を養うべし。
心は東洋医学では「神」。
人間が人間として人間らしく生きるために指令を出してコントロールしている君主の官ですね。
心を和かにし、気を荒立てずに平らにし、怒りや欲を抑え、憂いや思い悩むことを少なくし、心を苦しめず、気を損なわないように過ごすこと。
これが心気を養う方法です。
現代人には難しいですよね。
おいしそうなものを見たら食べたくなるし、他人のSNSの投稿を見れば羨んでみたり、忙しくてついつい家族に八つ当たりし、何でも悪い方へグチグチ考えてみたり、人に嫌われていないかばかり気にしてみたり…。
自分は自分。他人は他人。
自分が他人の思う通りになんて動きたくないのだから、他人が自分の思う通りになんて動くわけがない。
自分が他人の考えていることなんてわからないのだから、他人が自分のことをどう思っていようと気にしなければいい。
私はこうしたいからこうする。
べつに他の人は私のことなんて、気にも止めていないし。
と、自分に言い聞かせてあげるだけで、かなり心は穏やかに平らになるものです。
『嫌われる勇気』という本が一時期話題になり、うちの娘も中学校の朝読書の時間にせっせと読んでおりましたが、他人にどう思われようと別にどーでもいいじゃないですか!
自分で自分を、かわいそうで複雑な環境の身にしないこと。
この仕事をしていると、「自分は体が悪いかわいそうな人」と認められたい方に、少なからず遭遇することがあります。
こうなると、体は大丈夫でも、心は健康な状態と言い難いですよね。
なので、いったん「それは大変でしたね。さぞ辛かったでしょう」と受け止めてあげることから始めます。
心がカゼの初期症状みたいなものですから、「どこも悪くないよ」と突き返してしまっては、病が深くなっていきかねません。心気を養えない状態なのですから。
何回か通って、おしゃべりをして、リラックスしているうちに、自分で心気を養えるようになり、卒業していく。
それができるのも、東洋医学の力と思っています。
寝過ぎは、気を停滞させます。気が動かないとやる気も出ません。早寝早起きで、日中はしっかり活動しましょう。
食後にすぐ寝ると、消化されず元気を損ないます。食滞はイライラの元となります。食後は軽く歩いたり、お腹や腰をさすると消化が促進されます。
食事は腹八分目で。ストレス食いなんて、気も消化も止まって最悪です。
生活習慣を見直すことも、心穏やかに過ごす秘訣です。
心気をすり減らす生活をやめて、心気を養いましょう。
参考文献:
『図解 養生訓』斎藤 孝 著
『養生訓 (中公文庫) 』貝原 益軒 著 松田 道雄 訳