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肺気と腱鞘炎

「更年期」と呼ばれるお年頃はまだ早い!(と思っている)鍼灸師小川です。

 

「肩甲骨が動かない」「肺気の虚」からくる腱鞘炎のお話です。

 

更年期トラブルでよく聞く症状が、ホットフラッシュなどののぼせであったり、イライラ怒りっぽくなることかと思います。

これは、陽気を引き締めておく陰の力が衰えることによって起こります。

陽気を引き締める陰の力で私たち鍼灸師が真っ先にイメージするのは「腎」。

腎は体が成長するにつれて充実し、余りで子どもを作ることができ、老化とともに減っていくものです。 

 

足の裏から始まる少陰腎経の経絡は、足の内側を通り、腰椎の前側、動脈の後ろ側のあたりを上り、心臓の裏側を通って舌の根元に終る経絡です。

 

人間の体には12の経絡が流れています。

 

手の太陰肺経足の太陰脾経

手の少陰心経足の少陰腎経

手の厥陰心包経足の厥陰肝経

この6つの経脈は、地の気を引き締めながら天に向かって吸い上げる陰の経絡。

 

手の陽明大腸経足の陽明胃経

手の太陽小腸経足の太陽膀胱経

手の少陽三焦経足の少陽胆経

この6つの経脈は、天の気を地へ発散させる陽の経絡。

 

陰の経絡がギュッと引き締めることによって、陽に気血がしっかり巡るのです。

しかし、この陰の経絡にギュッと引き締める力がなくなると、陽の経絡に気血が足りなくなったり、停滞を起こすのです。

 

暖かい空気やお湯は上に溜まります。

顔には陽の経絡が巡り、1番陽気を蓄えているのは胸です。

なので、陽気は顔や胸で停滞しやすく、巡らせるパワーがなくなると、顔の周りや胸に熱を感じる不調があらわれるのです。

これが、のぼせやイライラ、動悸などですね。

この更年期特有の熱の停滞症状がある人は、太陰の経絡の引き締め力が足りなくなっていることがあります。

 

手の太陰肺経は手の母指球をめぐり、母指球の筋肉に気血を送って養っています。

肺経の経絡が虚している場合、母指球も養われていないことがあります。

 

陰経の経絡が衰え始める更年期頃になると、家事や仕事が楽になるどころか、忙しさを増す方が多いのではないでしょうか?

腱鞘炎は手の使い過ぎもありますが、そんな体の変化を教えてくれるサインでもあります。

 

ちょっと話は変わりますが、肩こりがひどく、大人になってから風邪をひいた後などに喘息のような症状に悩まされる方がいます。

肩甲骨が動かないほども首や肩がガチガチになると、肺気の巡りも悪くなるのです。

肺は自分で動いている臓器ではありません。

胸郭の周りにある筋肉(特に横隔膜)の収縮によって、呼吸をしています。

肋間筋や腹筋、首の筋肉なども関わってきます。

肺の周りにある筋肉が硬く、気血の巡らない状態であれば肺の働きも悪くなるため、咳が長引くのです。

 

肩甲骨は体幹についている骨ですが、体幹の骨としてではなく、腕の骨として考えます。

腕を体幹にしっかりと固定し、広く可動するために様々な筋肉が付着しています。

肩こりのひどい方は肩甲骨を押してもガチガチで動きが非常に悪いです。

と同時に、咳が長引く方、腱鞘炎になる方も肩甲骨が動かない方が多いですね。

 

肩甲骨がなめらかに動かないということは、体幹をうまく使えず、腕や手の力だけで手を使った作業をしていることがあります。

そうして手首に負担をかけると、気血が巡っていない母指球に負担がかかり始め、腱鞘炎となっていきます。

 

腱鞘炎というよりは、母指球の痛みとして訴える方が多いかもしれません。

 

腱鞘炎だけでなく、呼吸器系や皮膚の乾燥、体のバリア機能、冷えなどは、東洋医学で言うところのが関わる部位です。

肺に不調の表れやすい方は、しっかり肩甲骨を動かすような運動をしましょう。

乾布摩擦の動きは、肩甲骨をしっかり動かしながら、背中の肺の領域に皮膚刺激を与えるので、肺気をUPさせるには、絶好の動きです。

胸をしっかり広げて、空手の突きの動きをゆっくりやるのもいいですね。

 

私は「壁押し」をよくやります。手をつく位置を高くしたり低くすることによって、筋肉を刺激する部位を変えることができるためです。(やり方は来院時に聞いてください)

 

ちなみに肩関節は11個の筋肉によって構成されているために、可動域を広く大きな動きができるのです。

体幹を支えるインナーマッスルと違って、なめらかにしなやかに動くことによって、腕全体、そして手を自由に動かせるようになっています。

その筋肉のどれかがガチガチにかたまって、動きが悪くなれば当然、手の動きにも負担がかかります。

 

思い当たる不調のある方は、さっそく今日から肩甲骨を動かしましょう!!

肩甲骨が滑らかに動くようになると、肺気も巡りやすくなります。

体もポカポカしてきます。

 

リウマチと言われなくても、ある程度年を重ねた女性に指の関節が痛んで腫れてくる方が多くなります。

気が巡って関節を温めているのですが、その気が巡らないことによって、寒湿の邪気が入り込みやすくなるのです。

 

湿は、関節に溜まって重だるい痛みや腫れを引き起こす邪気。

寒は、そこに留まって刺すような痛みを起こす邪気。

 

 

 

秋の気配がぐっと深まってきたこの頃。

秋は肺の気を盛んにさせる季節。

肺が疲れて気を消耗するとともに腱鞘炎にならないよう、養生しましょうね。

 

すでに咳が止まらず長引いている方は早めに呼吸器科の病院を!

とりあえず今は大丈夫だけれども、毎年秋から冬にかけて風邪をひくと咳が長引く。

という方は、首肩から背中にかけてのコリを改善する必要があります。

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