Q:熱があるので小児科へ連れて行ったのですが、風邪薬を出してくれません

熱は風邪のウイルスや細菌が直接出すのではありません。

これらの病原体をやっつけようと身体が反応するために熱が出るのです。

なので、体力・抵抗力のある人が持っている戦う力なのです。

 

高齢者になると、肺炎をただの風邪と誤診されて亡くなる方がいらっしゃいますが、これは熱を作り出す体力がなくなったために、肺炎特有の高熱が出ないので見過ごされてしまうんですね…。

 

熱を出せるのは、その子の抵抗力の強さ。

 

子どもは熱が出ると一気に40℃位まで上がることがありますが,熱の高さ自体は重症度とは関係がありません。

 

 

東洋医学では、体の守りや抵抗力が弱った時に、風の邪、風寒の邪が膀胱経の経絡に侵入したと考えます。

 

膀胱経の肩背部には風門というツボがあります。

 

ここから風寒の邪が侵入し、邪が生気と戦うために発熱するのです。

 

この風門がある膀胱経の経絡上で戦っているうちはまだ元気な証拠。

 

膀胱経は太陽経とも言い、体の中で1番外側になる経絡です。

 

その太陽経から少陽経、陽明経へと侵入するにつれて、重症化していきます。

 

陰の経絡に侵入すると、命の危険が迫ってきます。

 

 

外邪はなるべく、表層の太陽経で暴れているうちに体から追い出した方がいいのです。

 

 

それには鍼灸治療で、体の表層にいる外邪を追い出すのが1番。

 

お子さまが「あら?風邪ひいた?」と感じるときがありませんか?

 

・ちょっと元気がない。

・もしくは逆にみょーにテンションが高い。

・手足が冷たく、おでこが熱く、目がトロンとしている…。

 

寒がっていたりしたら、要注意です!

汗をかくくらいガンガン温めましょう。

 

大椎に棒灸をし、足浴をする。

レンジでチンする湯たんぽなどを用意しておくといいですね。

 

この時点で肩背部を小児はりや、小児はりを応用したスキンタッチ法をしてあげると、外邪を追い出しやすくなります。

 

軽く汗ばんで、手足が熱くなってきたら、ゆっくり休ませる。

この時に食事が取れなくても大丈夫。

 

…というか、食事を消化させる方へエネルギーが奪われてしまうので、かえって逆効果。

お腹が空いてどうしても食べたいのであれば、お粥や野菜スープなどを軽くでいいのですが、食べたくないのに「栄養つけなきゃ!」と無理に食べさせる必要はありません。

 

水分補給にはスポーツドリンクよりも、お白湯や塩を一つまみ入れたほうじ茶がおすすめです。

 

ガッツリお灸をし、小児はりをして、外邪を散らせたあとは、自分の体力で、侵入してきた外邪を追い出すだけ。

 

すると、次の日はケロッと熱も下がり、元気に保育園や学校に行ってくれます。

 

 

これで熱が下がらない場合は、何か強力なウイルスや細菌も考えられるので、病院を受診しましょう。

(我が家の子どもたちが病院を受診する目的は、変なウイルスがいないかどうかを検査してもらうためです。

特定のウイルスや菌などはやはりきちんとそれ専用の薬が必要なこともあります。特に溶連菌など後遺症の怖い病気もあるので)

 

 

病院を受診し、検査したけど何も出なかった。

初期症状の時は鼻水も咳もないことが多いですね。

 

すると、座薬などの解熱剤だけ処方されることも。

 

 

でも、この解熱剤は風邪を治してくれる薬ではありません。

 

風邪と戦う炎症を鎮めるだけの薬。

 

今まさに、入って来たばかりの外邪と戦っている時に解熱剤を使うのは、外邪に「暴れてくださーい」と言っているようなもの!

 

使うタイミングは熱が上がりきってから!

 

熱がまだ上がっている途中で使うと、熱の上昇スピードに打ち消されて効かないこともあります。

 

熱で体が壊れるのではなく、熱は戦って発生するものですから、そこに込められている情報を読み取ることが大切です。

 

手足が冷たく、寒がっているうちはまだ熱が上がる証拠。

体をよく暖める。

 

上がりきって、熱くなり、布団を跳ね除けたりし始めたら様子を見て解熱剤を使用しましょう。

 

元気があって、よく眠れるようなら、使用をしないで様子を見てもよいでしょう。

 

解熱剤を使う目的は,高熱による症状を和らげて,少し楽に眠れたり水分をとることができるようになることと考えて下さい.

 

けして、風邪を治す薬ではない、ということを覚えておいてくださいね。

 

 

では、抗生物質はどうして出してくれないのか?

 

今や新規抗生剤は2年に1剤程度しか登場しなくなっているそうです。

そして、多くの抗生剤はその翌年には耐性菌が出現している…。

 

つまり、抗生物質はもはや発見されにくくなり、そして、使えば使うほど耐性菌が増えるという状況です。

不要な抗生剤を使うことは、その抗生剤を使えなくすることにもなります。

 

抗生物質は最小の期間、十分な量を、充分に検討した最小限の患者さんに、効果的に使用していくことが求められます。

 

 

風邪の原因は、ウイルスによるものがほとんどです。

 

ウイルスはDNA、RNAとたんぱく質の殻のみで存在し、何かの細胞に寄生することで自分を複製させます。

自分だけで増殖することはできないのですが、どんどん変化していくという特徴があります。

 

ウイルスと違って、細菌は細胞膜があります。

この細胞を作らないようにするのが抗菌薬、抗生物質です。

 

細菌などは菌自体が増殖するので殺菌しやすく、抗生物質が効きます。

 

しかし、風邪の原因の多くであるウイルスは、人間や動物の細胞の中に入り込んで増殖します。

 

生きている人間の細胞を殺してしまうわけにはいかないので、結局のところ風邪は自分の抗体が戦うしかないのです。

 

このウイルスを退治する抗体は、のどや鼻の粘膜に多く存在します。

 

のどや鼻の粘膜を大切にすることで、風邪を引きにくくなります。

 

・きれいに洗っていない手で、鼻や口をさわらない。

・空気を乾燥させない。

・辛い物やしょっぱい物を摂り過ぎない。

・子どもの側でタバコを吸わない。

 

 

と、いうことで、

風邪と戦う手伝いをしてくれるのは、お薬ではありません。

 

小児はりは手伝いになりますが。

病院へ行った帰りにでもお問合せください。

時間が空いていましたら、すぐにお越しいただけます。

 

 

風邪の後、長引く鼻水、中耳炎、咳のお話はまた別の機会に。